単位根検定とは

期待値と自己共分散が$t$によらず一定であるような場合、その確率過程は弱定常過程であるという。 定常過程は定義からその変化が時刻に依存することがないので、平均回帰的(平均に戻ろうとする性質)でありかつ トレンド(時刻に依存した変化)を持ちません。 しかし、時系列データのなかには必ずしも定常過程ではかけないようなものも存在します。 例えば株価や為替レートなどがその例です。そのような時系列データをモデリングする手法の最も基本的なものとして単位根過程があります。 これは差分は定常過程であることを仮定する確率モデルです。

単位根過程
確率過程$\{y_t\}$がすべての$t$について $$ \Delta y_t:=y_t-y_{t-1} $$ が弱定常過程になっているとき、$\{y_t\}$は単位根過程であるという。

単位根検定

考えている確率過程が単位根過程であるか定常過程であるかを検定したいことがある。単位根過程には平均回帰性がないので、たとえば一度大きな変動が起きるとそれはその影響は ランダムネスで打ち消されることはなく残ってしまう。反対に定常過程であれば一度大きな変動があっても時間が経てば平均に戻っていくはずである。 したがって、考えている確率過程が定常的に振る舞っているのか、単位根過程であるのかを検定する手段の一つとして単位根検定がある。 単位根検定では考えている確率過程が少なくとも単位根過程であることを仮定する。(定常過程ならば単位根過程である)

DF検定(Dickey-Fuller Test)

考えている時系列の期待値が0であるかやトレンドを持つかどうかによって単位根検定にもバリエーションがある。 ここでは考えている確率過程の平均が0でトレンドを持たない場合を考える。すなわち、

\[\begin{align} &H_0: y_t=y_{t-1}+u_t\\ &H_1: y_t=\rho y_{t-1}+u_t, |\rho|<1 \end{align}\]

$u_t$は平均0の確率過程である。これは$\rho$についての検定と見ることができて、$H_0:\rho=1, H_1:|\rho|<1$に対応している。

DF分布

$\rho$のOLS推定量を$\hat{\rho}$とすると、サンプルサイズが$T$である場合は$\rho=1$の元での漸近分布として

\[\tau_{\rho=1}=T(\hat{\rho}-1)\overset{d}{\to}\frac{\frac{1}{2}\left\{[W(1)]^2-1\right\}}{\int_{0}^1[W(r)]^2dr}\]

が成立することが知られており($\overset{d}{to}$は分布収束)、この漸近分布をDF分布という。検定のときはDF分布の棄却点を設定し、 $\tau_{\rho=1}$が棄却点より小さい場合は$H_0$を棄却する。